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もの忘れ

最近は家族が一緒の生活が難しくなってきており、独り暮らし、あるいは老夫婦だけでの生活で刺激が少ないため、 痴呆も増えてきています。 痴呆がすすみ、施設に入らなくてはならなくなった方の半分は、 早めの治療や環境の整備、家族の協力があれば、本来在宅でいける方です。 脳を刺激する一番よい方法は会話です。 「すぐ忘れるので会話にならない」と言わず、昔話からでよいので、家庭では会話を心掛けて下さい。

もの忘れは仕方がない・・・?

確かに、もの忘れは誰でも高齢になれば出てきます。 人の脳細胞は20才ごろをピークに減り始め、75才ごろには、90%ぐらいになります。 ですから、もの忘れも老化現象による緩やかな発生は心配ありません。 ところが、痴呆と呼ばれる脳や身体の病気が原因で起こるものは、その進行があきらかに早いペースで進み、治療が必要です。

痴呆には、脳梗塞や脳内出血により、症状が急激に発症、悪化していく脳血管性痴呆と、 脳に進行的な萎縮がみられ、それに伴い症状が進行していくアルツハイマー型痴呆などがあり、 日本人の痴呆の90%は、この2つによるものです。

もの忘れチェック

採点方法
 よくある:2点 たまにある:1点 ほとんどない:0点
合計点数
 0〜6点:正常 7〜12点:要注意
 13点以上:一度受診されることをお勧めします

もの忘れ

次の10項目でもの忘れチェックしてみてください。

  • 同じことを何度も言ったり、尋ねたりする
  • 置き忘れやしまい忘れが目立つ
  • 人の名前が思い出せない
  • 理由もないのに気がふさぐことがある
  • 漢字を忘れる
  • 物の名前が出てこなくなった
  • これからしようとする事を忘れる
  • 判断するのに時間がかかる
  • 新しいことがなかなか覚えられない
  • 外出がおっくうになる

診察

診察は、まず聞き取りから始めます。 ご本人と周りの方の言っていることをそれぞれ別々にお聞きし、くい違い等をみて行きます。 ですから最初は必ず、身近な方と一緒に来て頂くようにしています。

次にご本人の感覚の崩れというものを調べます。 時間と場所をお聞きしたり、今日の昼食をお聞きし短期間の記憶力を調べたりします。 また、昔のことをお聞きすることもあります。

受診の動機として、ご本人が「最近もの忘れがひどい」といって来られるケースと、 「言うことがおかしい」「同じ事を繰り返して言う」とかで周りの方が連れてこられるケースがあります。 受診される方の約3割は、老化によるもの忘れや、気のせいという方で心配ありません。

その他の検査

アルツハイマー型痴呆患者のMRI
原図:東京医科大学病院
    羽生春夫先生

まず、MMSという聞き取りテスト形式の検査をします。 これにより簡単な痴呆の状況がわかり、アルツハイマー型であるとか、脳血管性であるとかも、ある程度わかります。

MRI 検査では、頭の中の病気のチェックや脳の萎縮の有無、程度、場所等を調べます。 原因によっては外科的手術により改善する痴呆もあります。

そして血液検査により、全身の状態をみて、他の病気がないか、それによって引き起こされているのではないかを調べます。

さらに必要に応じて、脳の血のめぐりを調べるキセノンCT検査や、頭の中のそれぞれの部位の働きを調べる脳波検査等をおこないます。

治療

治療法は原因や症状によって違います。

アルツハイマーや脳梗塞、甲状腺の機能低下などの内科的原因の場合は、薬を内服し、 リハビリによって脳に刺激を与えるよう生活指導を行ないます。

また、原因によっては、手術を施すことがあります。

いずれも原因が一つだけでなく複合していることもありますので、それぞれのケースによって治療法は異なってきます。

痴呆は適切な治療を行なえば、治ることが可能な場合と、 治ることが難しくてもその進行を遅らせることが可能な場合があります。

脳神経外科 楠木司

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