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パーキンソン病 季節ごとのケア
2018/01/05 7階多目的ホール 第84回脳と神経の勉強会


自律神経とは
パーキンソン病は脳内の神経物質が何らかの原因で減少し、体の動きなどに障害が現れる病気です。 代表的な症状として、下記のようなものがあります。

パーキンソン病の代表的症状
非運動症状の一つに、自律神経障害があります。 自律神経とは、意思とは無関係に血圧や心拍、発汗など体の機能を調整する神経のこと。 交感神経と副交感神経の2つに分類され、健康な方ではこの2つのバランスがよい状態に保たれています。
しかし、パーキンソン病の方では比較的早期から自律神経系の変性を伴います。 発汗や血圧のコントロールがうまくできなくなるため、日常生活において注意が必要です。 季節ごとに特に注意すべき点についてご紹介します。
暑い季節の注意点

散歩や運動は涼しい時間帯に
直射日光を避けて

水分補給は定期的に

暑すぎ冷えすぎないよう注意

動作はゆっくりと
パーキンソン病の方の約半数に、発汗減少による体温調節障害を伴うとの報告があります。 夏場の直射日光を長時間浴びると、体温が上昇してしまいます。 散歩や運動は涼しい時間帯を選ぶ、外出時は帽子をかぶるなど直射日光を避けましょう。
発汗減少は病気の進行とともに重症化しやすくなります。 四肢の発汗は減少するのですが、顔面の発汗が増えることが多く、「汗をかきたくないから水分をとらない」のが最も危険です。 「のどが乾いたら水分をとる」のではなく、「決めた時間に一定量の水分をとる」ようにするとよいでしょう。
パーキンソン病の方は高齢者同様、暑さを感じにくくなります。 冷房を上手に利用して、暑すぎ冷えすぎないよう調節しましょう。
暑い時期は血管が拡張するため、立ち上がったときに血液が下肢に移動しやすくなり脳の血流が低下しやすくなります。 急に起き上がったり立ち上がったりすると血圧が急低下し、立ちくらみやふらつき、時に失神・転倒をきたすことも。 動作はゆっくりと、介護する人も注意しましょう。
寒い季節の注意点

動き始めはゆっくりと

手足の冷えに注意

不眠、過活動膀胱、寝返り減少
による低温やけどにも注意

暖かい日はできるだけ外出を
ふるえ・筋肉のこわばり・動作緩慢などの運動症状は、体が冷えると増強しやすくなります。 朝、起床時は動きが低下していることが多いので、転倒などを防ぐため、動き始めはゆっくり行いましょう。
末端の血流障害による手足の冷えに注意が必要です。 手袋・靴下・耳あてなどの防寒具、血行改善や保湿のクリームなどを使用しましょう。
パーキンソン病の方では、過活動膀胱、不眠(途中覚醒)に起因する頻尿などの排尿障害が生じる頻度が高くなります。 泌尿器科に相談する、主治医にパーキンソン病薬や睡眠薬の調整などを相談しましょう。
寝返りが少ないため、睡眠途中に目が覚めて不眠の原因となることがあります。 寝返りしやすいよう、羽根布団など軽くて保温性にすぐれた寝具を使用しましょう。 電気毛布は、寝返り減少により低温やけどの危険性が高く、脱水もきたしやすくなるため、長時間の使用は危険です。
寒いと引きこもりがちで運動量が低下します。 日光不足、運動不足では、心や自律神経のバランスを崩しがち。 天気のよい暖かい日はできるだけ外出しましょう。 デイサービスや通所リハなど介護サービスの利用は継続しやすいのでおすすめです。
脳神経センター長・パーキンソン病外来担当医 清家 真人