トップ > 診療案内 >  脳神経外科 > 脊髄硬膜外刺激療法(SCS)

脳神経外科

脊髄硬膜外刺激療法(SCS)

腰痛に対する「脊髄硬膜外刺激術」について

腰痛は、人が2本足で歩行するように進化して以来、宿命ともいえる症状です。 もともと4本の足で歩く動物にとって、背骨は頭や内臓をささえる基本構築であり、 家屋の梁のような役割をはたし、身体の重さは4本の足に分散されていました。 しかし、2本足で歩行するようになって背骨は縦の構造物となり、 上半身の重みはすべて腰への負荷となってしまいました。 このため、どこかにちょっとしたねじれやゆがみが生じると、腰痛をきたすようになったのです。

腰痛の原因と対策
SCS術後の改善調査
SCSは、痛みの信号を脳に伝わり
にくくすることで痛みを和らげ
る対症療法。

腰痛の原因は数多くあります。 本来、正常な背骨は横から見るとS字にカーブしているのですが、反りすぎの背骨やまっすぐすぎる背骨などは、 さまざまな部分によけいな負荷をかけることとなり、これが腰痛の原因となります。 長期間、こうした負荷がかかると背骨自体の変形をきたして変形性脊椎症、椎間板ヘルニアなどをきたしますし、 筋肉への異常な負荷による筋肉疲労や筋肉の過剰な緊張、きつい下着類による血流障害なども症状を悪化させます。

当院脳神経外科は、パーキンソン病に対する脳深部刺激術(DBS手術)を手がけていることから、 パーキンソン病の患者さまが数多く通院されています。 パーキンソン病の患者さまは、歩行時に前屈み(前傾姿勢)になることが多く、 このため腰痛を生じる頻度が一般の方よりも多くなります。

この腰痛対策として当院が取り入れたのが、脊髄硬膜外刺激療法(SCS)です。 もちろん、パーキンソン病の人だけでなく、原因にかかわらず腰痛一般に効果が認められます。

慢性的な腰痛にお悩みの方はご相談ください。

治療

この治療は2つの段階からなっています。

第1段階

第1段階は「お試しパック」と称していますが、局所麻酔で腰の背骨の部分に針を刺して、 この針を経由して脊髄の硬膜外腔(脊髄を包んでいる膜の外側と背骨の内側の隙間)に 直径1.2mm程度の軟らかい電線を挿入します。 手術中に試験的に電流を流して普段痛みを感じている部分に刺激感が得られる部分を探し、 その位置に電線を留置します。

その後1週間、電気刺激を続けます。 この刺激に用いる機械はタバコのパッケージくらいの大きさで、携帯することができますので、 刺激中も自由に歩いたり寝転んだりすることができます。 3日目頃から以前の腰痛が軽減していることがはっきりしてきます。 電気刺激後1週間で、腰痛がもとの20〜30%程度以下に軽減できていれば治療は成功です。

電線を抜去して2〜3日すれば退院となります。 電線を抜去すると電気刺激はできなくなりますが、通常数週間は腰痛が軽減します。 どの程度の期間有効かは人によって異なりますが、 1年程度腰痛が気にならなくなる人もいれば3週間程度で痛みが戻ってくる人もいます。

第2段階
脊髄硬膜外刺激療法
脊髄硬膜外刺激電極と発信器を
埋め込んだ状態のレントゲン写真

第2段階は「本埋め込み」と称して、マッチ箱くらいの大きさの電気刺激のための発信器を 下腹部の皮下脂肪の中に埋め込んでしまうものです。 「お試しパック」で腰痛から解放されたものの、数週間たって腰痛が戻ってきたときに「本埋め込み」を検討します。 前回の「お試し」で腰痛が軽減して、体内にマッチ箱程度の器械を埋め込んでも値打ちがあると思ってもらえる方に行います。

「お試しパック」と同様に背中から脊髄の硬膜外腔に刺激用電極を留置し、1週間のテスト刺激を行います。 前回の「お試し」と同様に腰痛軽減効果が得られたなら、全身麻酔で発信器を埋め込みます。 これは30分程度の小手術で可能です。

最近では「お試しパック」を行わずに直接「本埋め込み」を行う場合も増えてきています。

なお、脊髄硬膜外腔への電極挿入については、 硬膜外麻酔や硬膜外ブロックという手技と同一の方法で電線を挿入することになることから、 当院では、日頃から硬膜外麻酔やブロックを数多く手がけている麻酔科の医師にお願いして安全に電線挿入を行っています。

脳神経外科  清家 真人

▲ ページの先頭へ