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「パーキンソン病とうつ病、認知症 非運動症状に注目して」
2016/05/14 高知市・障害者福祉センター パーキンソン病友の会高知県支部講演会

神経内科部長 信國圭吾


パーキンソン病の治療法は進歩し、予後が改善されてきました。 しかし、これに伴い、認知機能障害や自律神経障害、幻覚、睡眠異常などさまざまな非運動症状が問題になるようになりました。 特に、うつや認知症はご本人やご家族の生活にさまざまな影響を与えています。
パーキンソン病とうつ
パーキンソン病の方は38〜65%と高い割合でうつを合併することが分かっています。
パーキンソン病のうつ症状とうつ病のうつ症状には類似性がみられますが、 パーキンソン病では無感動・無関心・精神運動遅滞などが特徴で、 うつ病でよく見られる罪業感・自殺念慮・無力感といった症状は少ないとされています。
パーキンソン病と認知症
パーキンソン病の方は発症から12年で60%、20年で83%、全患者の31〜40%が認知症を発症するとされ、 認知症を発症すると運動症状の進行も早くなると言われています。
記憶障害は目立たず、視空間認知が早期から障害され、道に迷いやすいなどの傾向が見られるのが特徴です。
最近、第3の認知症として話題のレビー小体型認知症は、認知症がパーキンソン症状に先行、 あるいはパーキンソン症状出現後1年以内に認知症が出現した場合に診断されますが、 本質的にはパーキンソン病と同一疾患と考えられています。
パーキンソン病の生命予後
パーキンソン病の方とそうでない方を比較した場合、 生命予後(病気の経過において生命が維持できるかどうかについての予測)にあまり違いはありません。 しかし、認知症の合併は生命予後に影響すると言われています。
現在、うつや認知症に対するパーキンソン病の薬の効果などがさかんに研究されています。 発症当初のうつはパーキンソン病の薬で症状がかなり改善することが分かっています。
最近、パーキンソン病のうつ症状や認知症に、塩酸ドネペジルなどの抗コリンエステラーゼ剤が有効であることが報告されており、 パーキンソン病の方の予後が改善されることが期待されています。